電源のトラブル調査の流れ

 ブラシレス・キット2のトラブルで最も多いのが電源関係です.

 電気図を見ながら順を追って調査し,原因を突き止めます.取説に入っている電気図から,電源関係の要素をピックアップしたモジュール図を次に示します.

 各モジュールを調査の流れと共に説明します.調査は電源電圧12Vで進めます(24Vでもよいですが,低めにしておいた方が何かあった時でも安全です)

●BATT(電源入力端子)

 バッテリや安定化電源から電源を貰うために,+の線を接続するところです.ここから,全回路の電源を得ます.

 調査するときは,バッテリや,安定化電源が死んでいる可能性もあります.全てを疑うので,まずは「① – GND 間」の電圧を測ります.

 12Vまで電圧が上がらない場合,電源そのものに問題があるか,インバータ・キット2の基板上にあるMOSFETが故障(ショートモード)している可能性が高いです.

●GND(電源GND)

 バッテリや,安定化電源の-側に接続するために線を接続する端子です.

●ヒューズ

 ヒューズの状態確認は目視だけでは確実性が低いので,「② – GND 間」の電圧を測ります.ここで12Vを観測できなければ,ヒューズが飛んでいる可能性が高いでしょう.その場合は,緑の基板からヒューズを取り外して(M5ネジ),ヒューズ単体で断線していないかどうかを調べます.ヒューズが飛ぶほどの電流が流れた場合,MOSFETも2つ以上死んでいる(ショートモード)可能性が高いでしょう.その場合,ヒューズを交換しても,再度電源ONでヒューズが飛びます.

●ダイオード(D15)

 電源の+とーを逆接続したときに回路を保護する目的で設置されているダイオードです.電源接続時に端子台でパチッとなったりすると,このダイオードが壊れることがあります.

 SMD(表面実装部品)ですが,簡単に交換できます.ピンセット(高いやつがおすすめ)と,はんだ小手は必要です.

 基板上の場所は,DC-DCコンバータ基板の下です.小さい基板を外す(ねじ4つ)と見えます.

 部品(D15)の「入力側 – GND 間」で12Vが見えて,「出力側 – GND 間」で12Vが見えない場合,ダイオードD15が破損しています.(ただし,静的に正常に見えても,電流を流した時におかしな電圧降下する場合は,破損しています.ダイオードなので正常であれば0.7V程度しか降下しない)

 交換用ダイオードの例

●DC-DCコンバータ

 入力電圧12~24V(正確な仕様はデータシート参照)から,12Vの電圧を作る部品です.

 メインスイッチをOFFにした状態で,入力電圧を調べるため,「④ – GND 間」を測ります.次に,出力電圧「⑤ – GND 間」を測ります.④で12Vを観測できるのに,⑤で12Vを観測できなければDC-DCコンバータの故障の可能性が高いです.

 次にメインスイッチをONにした状態で,④を測ります.メインスイッチOFFのときに,12Vを観測できたのに,メインスイッチONで12Vを観測できない場合,D15や後段の回路が故障している可能性があります.

 続けてメインスイッチONの状態で,⑤を測ります.④で12Vを観測できて,⑤で12Vを観測できない(11Vくらいあれば大丈夫ですが,9Vとかだと何かがおかしい)場合,DC-DCコンバータの故障か,後段の回路(マイコンボードか,そのさらに後ろの3.3V系もしくは5V系)の故障を疑います.その場合,コネクタを全て抜くことで3.3V系と5V系の回路を切り離して,再度測定します(電源OFFにしてから抜く).ただし,メインスイッチ・コネクタは抜いてしまうと電源を入れられないので,接続したままにします.これでも,症状が変わらない(④:12V,⑤:12V未満)場合,マイコンボードを抜いて,再度測定します.抜いた状態で,⑤に12Vが出て来るなら,マイコンボードが原因(恐らくショートしている)でしょう.全て抜いた状態でも④:12V,⑤:12V未満であれば,DC-DCコンバータの故障でしょう.DC-DCコンバータを緑の基板から取り外した状態で単体チェックしてください(12Vを入力して,出力が12になるかどうか).

●マイコンボード

 マイコンボードへの電源供給は,CN1の24ピン(⑧)に入ります.⑤で12Vを観測できる場合は,⑧で12Vを観測できるかどうかを調べます.⑧で12Vを観測できない場合,メインスイッチ周辺を疑います.メインスイッチの足のはんだ付けや,コネクタのはんだ付け(基板裏面をチェック)状態を確認します.

 ⑧で12Vを観測できるのに,マイコンボードの電源が入らない場合,マイコンボードが故障しているか,3.3V系もしくは5V系の回路が故障しています.その場合,メインスイッチ以外のコネクタを抜いた状態で,電源を入れてみます.コネクタを抜いた状態で,マイコンボードの電源が立ち上がるのであれば,その抜いたモジュールが原因です(恐らくショート).全て抜いた状態でもマイコンボードの電源が立ち上がらない場合,マイコンボードを抜いて,緑の基板側のCN1の24ピン(⑧)の電圧を測ります.12Vが供給されているのに,マイコンボードが立ち上がらない場合,マイコンボードが故障している可能性が高いので,マイコンボード(NUCLEO STM32F302R8)を交換してみるのがよいでしょう.

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